【回想】 屋久島の記憶

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今から17年ほど前、男三人で屋久島に行った 目的は勿論『屋久杉の中の最大の杉…縄文杉』である 2泊3日のムサ苦しい旅 YS11で鹿児島空港から島へ
一日目は島を一周し、千尋の滝などを見て、屋久杉ランドへ

二日目は登山 宿に用意してもらった弁当を持って早朝から出かける
レンタカーで屋久杉ランドしたの旧営林署のひいたトロッコの機関庫?の駐車場へ着く
既に他の登山客は出発していた
俺たちも宮の浦岳を目指し、トロッコ道をひたすら歩く
天気は雨 台風が近づいていた 空気が重い…
ロッコの鉄橋を渡る…谷は20~30mの深さがある…枕木に渡された足場板二枚しかない橋を渡る…手摺など勿論ない
震える脚を騙しながら、その延長が40~50mはある橋を…
(帰りも通るのかョ…)と心の中でつぶやきながら
3~4時間歩いて 登山道に移る

ここまでの間に 民家はない 昔は学校などがあったという広場や 団地跡はあったが 人の住める場所はない

それから30分ほどでウイルソン株に辿り着いた
広場の中にそれはあった 株の中は大きな空洞が出来ている 株に近づいていくと、中から女性が出てきた 顔はよく見てないが、その身なり背格好から40代後半と思われる 軽装で白っぽい花柄の傘をさしていた 台風が近づいているこんな日に 近所の奥さんが、ちょっとそこまで…といった格好で居た…そこから程近い祠の方へ歩いた行った
俺たちは不自然に思いながらも株の中で雨宿りをする 10畳はあろうか…広い 湧水もある 小さな神棚もあった そこで昼食を済ませて先を目指す

雨足が強くなってきた さっきの女性の姿はそこにはなかった… 
急ごう… 30分は歩いただろうか
途中這上がる様な所が幾つかあった…登山道は何時しか沢へとその姿を変えていった
雨に増して風が出てきた 後ろを振り返ると…そこには道は無い 小さな川が幾つも集まっていた
(このままじゃ危ない)
行くのが勇気なら、ここで引き返すのも勇気! 縄文杉はあとどのくらい先か分からない 素人が無理すると命に関わる
 
「帰ろう!」俺が口火を切る
「帰る?此処まで来て…」二人は口をそろえて反論する
周囲を見渡すとそれどころでないことは 誰もが理解できた
なんとか帰路に着く

益々風雨は強まる
こんなところ通ったっけ? あったあったここだ!間違いない
こんなことを繰り返しながら…ウイルソン株まで下りた
誰も居ない広場… 「あのオバサン帰ったんかなぁ」誰かが言った どこか気にかかる…
ロッコ道に出てきた これをあと3~4時間か…

川は濁流に変わっていた
川底を大きな岩が凄い音をたてて転げて流れて行く… 落ちたら絶対に死体はあがらない  『死』が目の前にあった 恐ろしい自然の力がそこにあった…
ロッコ道を20分ほど歩いた… カーブの先に   彼女が居た!!
普通の女性だった 顔ははっきり見ていない 傘に隠れていたようにも思える
ちょっとそこまでといった格好で… 彼女は無言で 疲れた様子も見せず…
暴風雨の中 花柄の傘だけで… じっと そこにたたずんでいた
 
俺たちは先を急いだ… ひたすらトロッコ道を …鉄橋を渡る… 風雨は強まり 生きた心地がしない… 落ちたら最後…

何事もなく駐車場までたどり着いた あたりは薄暗く 俺たちの車以外そこにはなかった
宿に着く 明日の飛行機のことだけが気になっていた
 
無事に帰り着き その頃になって妙に気になるのが あの傘をさしていた女性のこと
今でも時折思い出す
あの時の女性って… いったい…